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売れ残り服の廃棄禁止へ、アパレル業界の今後

2023年12月5日、欧州議会と欧州連合(EU)加盟国は、域内で事業展開するアパレル事業者に売れ残った服や靴などの衣料品の廃棄を禁止する法案で大筋合意しました。

今後、正式な承認手続きに入り、2年後※から施行を予定。「ファストファッション」による衣料品の廃棄拡大に歯止めをかける狙いです。

※中堅事業者は6年の移行期間が設けられる予定

2000年代の作って捨てる時代は終わりへ

流行品を低価格で大量消費する「ファストファッション」は、2000年代から浸透してきました。かねてからファストファッションの大量廃棄が問題視されています。

日本の衣料廃棄物は年間 50 万トンを超えると推計(2020 年)、焼却・埋め立て処分されるのは 90%以上とされています。

EUの試算では、毎年廃棄される服は1人平均で12キログラム。全体では1260万トンにも上ります。このうち再利用やリサイクルに回すのは22%にとどまっています。再利用するにもコストがかかるからです。

マッキンゼーの調査では、衣料品関連の温暖化ガス排出は約21億トン(2018年)で、世界全体の4%を占めます。気候変動の要因として4番目に大きな項目だとされています。

欧州議会によると、2000年から20年までに世界の衣料品生産は2倍近くに増え、このままのペースで進むと廃棄量がさらに拡大することが避けられないとしています。

今後は、「デジタル製品パスポート」よって衣料品ごとのライフサイクル全体での温暖化ガス排出量、再生原料の利用率などの情報をデータとして管理・開示させる対応が行われます。

私たち消費者も、「買って捨てる」生活から「リサイクルや修繕、寄付」などの意識が定着していく方向に向かうと考えられるでしょう。

 

「つくる責任」カラーで関われること

12.つくる責任、つかう責任ここからはSDGsの17の目標のうち「12 つくる責任 つかう責任」の観点からみていきます。ここでは「つくる」側、製造者の立場から。

EUの規制がすぐに日本にも反映されるとはいえませんが、海外展開も行っているユニクロ(ファーストリテイリング)はEU諸国での販売の際は、2年後から規制が適用されます。

日本のファストファッション中核のユニクロがその対応を行うのであれば、おのずと日本のアパレル企業にも波及することが考えられます。(スペインの「ZARA」も2年後から規制適応)

今後のことを考えると、ユニクロのような大手企業でない中小企業でも、大量廃棄を回避する対応をとっていく方が得策でしょう。

 

廃棄を減らすために製造者ができることとは。

消費者のニーズは多様化し個別化している時代にあって、大量生産はそもそもロスが大きいです。消費者の個々のニーズにあったピンポイントの製品が開発できるのが理想です。しかし、多種多様な製品を用意するのはコストがかかります。

 

そこで、カラー展開によるパーソナライズカラー戦略が有効になってきます。

パーソナライズカラー戦略とは、既製品であっても、消費者の個人的な価値観を反映させることができるカラー戦略です。消費者に対してオーターメイド感覚をアピールすることができ、こだわりのある消費者の満足度を高めることができます。

また、パーソナライズカラー戦略をパッケージ化、簡易化してカラー提案することも可能です。

 

カラーマーケティングの視点を取り入れ、大企業のようなマスを狙うのではなく、ニッチな層へのカラー提案を積極的に行っていく。それが大量消費をしない時代の、中小企業の生き残り戦略ではないでしょうか。

 

「つかう責任」カラーで関われること

最後に「つかう」側の消費者はカラーをどのように活かせるのか。アパレルに限った話をすると、「パーソナルカラー」が活用できます。

パーソナルカラーとは似合う色のこと。自分に何色が似合うのか、10代の早いうちから意識する人が出てきています。

自分にピッタリの色を選ぶことで、色選びの失敗を減らし服の廃棄を減らしていきます。また、「似合う」という自信が服への愛着となり、長く使う精神にもつながります。

パーソナルカラーが担えるのはほんの小さな小さなことですが、持続可能な社会の存続に向けて、1人1人の意識と行動が変わらないことには何も変化はありません。

つくり手もつかい手も責任と愛情をもって服の一生を全うさせていけるような社会になっていくために、カラーの専門家として関わっていきたいと考えています。

 

<参考資料>

日本経済新聞2023年12月6日夕刊

衣料廃棄物について考える‐国民生活センター

色彩検定協会公式テキスト1級編

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