カラー戦略 ブログ

色名で商品を選ぶのは失敗のもと

インターネット通販で色名に惹かれて商品を買ったけれど、届いた商品の色を見て「あれ?」と思ったことはありませんか?色は商品購入の決め手になる大事な要素のひとつなので、イメージした色と違うものが来たらがっかりしますよね。色名について意外と知られていなくて重要なことをお話していきましょう。

色名に踊らされる消費者

『カーキを着てみたいブルべさん必見!パーソナルカラー別グリーンの選び方』の記事をTwitterで紹介したところ、こんなツイートをいただきました。

プライベート用にモスグリーンのマスクが欲しくて探したのですが、写真はモスグリーン、色の名前はカーキ、届いた商品はオリーブグリーンでした。
情報がカオスすぎて笑っちゃいました。

インターネットで色名で商品を探し、実際の商品が届いたときの色のギャップ。意外とよくあるようで、想像した色と実物の色が違ったという理由で返品されることも少なくありません。

 

たとえば「アプリコット」ときいてどんな色をイメージしますか?

アプリコットとはあんずの色。やわらかいオレンジ色を指しますが、コスメではアプリコットはオレンジ系のピンクとして使われています。同じアプリコットという名前でも、メーカーによって発色はさまざま。ピンクが強め、オレンジが強め、鮮やかな色、淡い色など色の幅があります。

今やファッション、コスメに限らず、文具、家電製品、自動車など大小さまざまなプロダクト製品に魅力的な色名がついています。色名で商品を選ぶ楽しさはありますが、色名からイメージする色、写真で見る色、実際の色、全てが同じ色ということはなく、色名だけで判断して商品を選ぶのは避けた方がいいでしょう。

 

色名は正確に色を伝えられない

色名は色を表す名前だから、色を伝える役割があるんじゃないの?そう思うかもしれませんね。

確かに一定範囲の色を伝えることはできます。「アプリコット」の色名を知っていれば、ピンク系~オレンジ系の色と想像でき、緑や青だとは思いません。(アプリコットを知らなければ想像できませんが)

 

「アプリコット」「鶯色」「エメラルド」のような、多くの人が知っている物・動物・鉱物などから付けられた色名のことを、専門用語で「固有色名」といいます。そして固有色名よりももっとよく知られている「赤」「黄色」「緑」「青」は「基本色名」といいます。

固有色名も基本色名も色を表現するための名前なのですが、「正確に」色を伝達するには不十分なのです。

「ピンク」と聞いてあなたが想像するピンクと他人が想像するピンクが完全に一致するのは難しいでしょう。濃いピンクを想像する人もいれば、青みが強いピンクを想像する人もいます。それなら「濃いピンク」と形容詞を付ければいいように思いますが、濃い・薄いだけではまだ正確とは言えないのです。

誰が聞いても間違いなく全く同じ色として認識するために、「表色系」や「系統色名」という色の表示法があります。これはかなり専門的な話ですので、くわしい解説は省きますね。

ここで押さえておきたいのは、色名は色の共通理解にはいいのですが、色を正確に伝達するには不向きだということです。

 

ファッション用語と色彩用語は違う

インターネット通販に限らず、色名で混乱を招きやすいのが上記に挙げた「カーキ」です。

ファッション用語として定着しているカーキは、深いくすんだグリーンだと思っている方が多いでしょう。

じつは色彩学的には、カーキは「くすんだ赤みの黄(系統色名表記・マンセル値1Y5/5.5)」なのです。わかりやすくいえば黄土色っぽい色。カーキは黄色の仲間であって、グリーンの仲間ではありません。ちなみに日本語表記も「カーキー」となります。(ここでは統一してカーキで表記しています)

くすんだ赤みの黄のカーキは、19世紀半ばにイギリス軍が軍服としてこの色を採用して以来、ミリタリーカラーの代表色として使われています。ミリタリーという意味では、ファッションでいうグリーン系のカーキと同じです。しかし、色彩学で表記する色名と、ファッションで使われる色名に統一性はなく、統一しないといけないという決まりもありません。

色彩学にはJISで定められた色名の規格があり、ファッション業界では流行にあわせて独自の色名が生まれ進化をしています。カーキひとつとってもファッション用語ではオリーブグリーンもモスグリーンもひとまとめで「カーキ」と表記しても間違いではなく、色彩学だけで明確に定義されているのです。

 

プロダクト製品開発者、マーケティング担当者も色名に気をつけて

ここまでは消費者目線からの色名について書いてきましたが、最後に製造者側の方に向けてお伝えします。

商品のカラフル化は留まることがなく、新色を次々と開発していくのは限界があるかもしれません。しかし新しい色名をつけることによって、既存の色であっても新規性を打ち出すことが可能になります。同じ商品でも色名を変えただけで、売り上げが激変したという事例も実際にありました。

新色を開発するには時間とコストを要しますが、新しい色名を創るだけならコストを抑えることができるのです。また、色名は商品の世界観を表現したりメーカーのこだわりを表すのにとても有効です。

注意点は、色名から連想する色は人それぞれだということ。よく知られていない語(外国語など)を使ったりオリジナルの色名を創った場合は、それがどんな色なのか、消費者に分かりやすく伝える工夫が必要になります。

 

まとめ

ファッションでもプロダクト製品でも、商品説明には必ず色名の表記がついてきます。同じ商品、同じ色名でもブランド・メーカーによって見た目の色は異なります。商品を選ぶ際、色名はあくまで参考程度でお考えください。

とくにインターネットで購入するときは、色名で判断せず、実物の色に近そうかどうか写真をよく確認しましょう。購入してから「想像していた色と違う」という失敗が起こらないように気をつけてくださいね。

 

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