アニメを観ない人でも「プリキュア」の名前は一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
プリキュアを観たことがなくても、プリキュアを観て育った世代が「お客様になる」年頃になってきました。
未来のお客様の感性を知るヒントとして、色を切り口にプリキュアを分析していきます。
プリキュアアニメの特徴
まずプリキュアをご存知ない方のために簡単な解説を。
プリキュアは、女の子に人気の女の子版戦隊アニメです。 プリキュアが放映開始されたのが2004年。
主役の女の子に、仲間が3~4人のチーム。プリキュアに変身して悪い敵に立ち向かう、強くて心優しい女の子たち。
セーラームーン世代の筆者は、次世代セーラームーンと感じています。
「プリキュア」は20年以上続いているのに、アニメシリーズはほぼ毎年リニューアルされています。
登場人物もストーリーも一新。毎年「新プリキュア」が始まるのです。
2024年までで21シリーズ。85人の「キュア○○」がいます。(キュアピーチとかキュアグレースとかキュアワンダフルとか)
10歳(2025年4月現在)の娘がいるので、プリキュアを横目で見ながらこどもの熱の入り方を直に体験してきました。
プリキュアがど真ん中でヒットする世代は幼稚園。小学校1~2年くらいまでは好きなのですが、高学年が近くなるとこどもっぽいイメージがあるようです。
主役は市場ニーズに合わせて
キャラクターには必ずテーマカラーがあります。
プリキュアの主人公は、初代と2021年を除いて常にピンクがテーマカラー。(初代や2021年もプリキュアの服に一部ピンクが入っています)
ピンクはマゼンタピンクのような濃いピンクではなくて、優しいトーンのピンクです。
カラーの市場調査でも、幼稚園児の女の子の好きな色はピンク。小学生でも上位に入る色です。
主人公のカラーは市場に合わせたチョイスかと思います。
けれどプリキュアに憧れる女の子たちは、必ずしもピンクのキャラクター(主人公)が1番好きかというとそうでもありません。
きちんと調査したわけではありませんが、他の色のキャラクターが好きという声を聞きます。(うちの娘しかり)
準主役はこの色
ピンクに次いで多いキャラクターの色が黄色です。
黄色は心理四原色といわれる色のひとつ。5レンジャーのような複数のキャラクターが登場するものには必ずといっていいほどいるのが黄色。
黄色の色のイメージは、明るい・陽気・ユーモア・お調子者。キャラ設定でも必ず一人はいますよね。
ピンクも黄色も色彩心理としてはこどもを表す色。プリキュアの髪色がこの2色なのもこどもウケを狙ったものかもしれません。単に日本人が金髪志向なのかもしれませんが。
主役カラーにはならなくても、案外主役より人気を集める不動の人気カラーです。
カラーマーケットに大革新を与えた映画
2014年、アニメ界にも女の子の色嗜好にも市場(カラーマーケット)にも大きな影響を与えた映画がありました。
何か分かりますか?
そうです「アナと雪の女王」です。
アナ雪のヒットにより、女の子が大好きになった色が2色あります。 それがターコイズブルーと紫。
アナとエルサの服(ドレス)の色ですね。
水色は1990年代から小学生女子の人気ナンバー1カラー。
エルサのドレスも水色といえば水色ですが、エルサ登場以降人気の水色の色みが少し変わりました。
ブルーを薄くした水色ではなく、ほんのり緑みがかった淡いエメラルドグリーンを感じるブルー。
この記事では以下ターコイズブルーと表現します。
プリキュアもアナ雪人気の影響を受けてか、2016年以降からターコイズブルーのキャラクターが登場します。
それまでのブルーといえば、濃い青だったり薄い水色のキャラクターでした。薄い水色のキャラクターは登場回数が激減です。
ターコイズブルーはピンクのように甘くないけれど、可愛いらしさもあってクールな印象。
凛としたかっこよさに幼い女の子の憧れが詰まっているように感じます。エルサのキャラクターイメージの影響も大いにあるでしょう。
悪者カラーが憧れカラーに
アナのカラー、紫は2016年からほぼ毎年欠かさず登場するプリキュアの定番カラーになりました。
筆者の時代(30年以上前)は紫のキャラクターといえば、悪者か男の子のアニメキャラくらいでした。 アナ雪のおかげでイメージが一新した色といえるでしょう。
紫の色のイメージは魅惑的で神秘的、ミステリアス。
プリキュアは基本的に人間の女の子が変身するのですが、紫のプリキュアは妖精やアンドロイドや魔法使いだったりします。
2022年は『デリシャスパーティ プリキュア』で、食がテーマだったので紫のキャラクターがいませんでした。食べ物に紫は少ないので省かれたと考えられます。
キャラクター設定と色のイメージがピッタリですね。
2025年現在最新の『キミとアイドル プリキュア』は3番目のキャラクターが紫の女の子です。ピンク、青に次いでメインキャラクターのカラーになっているということは、色の人気が高い証です。
ターコイズブルー以上に定番化された紫。ピンクのような女性的な要素があってピンクより大人なイメージ。
不思議なかわいさと綺麗さを感じさせるところが女の子のツボなのでしょうか。アナ雪以降の世代の心を掴むポイントが紫にありそうです。
希少カラーの持つ意味
ここまで登場回数の多いカラーのご紹介をしましたが、数少ないカラーについても言及しておきましょう。
2025年までで登場回数4回だったのは「オレンジ」
オレンジのイメージそのままの明るく元気なキャラクターや、食欲を増幅される色なので食がテーマの『デリシャスパーティ プリキュア』で登場しました。
他のキャラクターと違って肌の色が浅黒い子、2023年には初の男の子プリキュアがオレンジでした。
ジェンダーや多様性を意識されているのか、男の子アニメによく使われるオレンジがこうした役割で出てきたのは興味深いところです。
オレンジ以上に登場回数が少ないのが「緑」
2008年と2012年以降キャラクターに使われていません。
緑は安心・安全の色ですが、突出した個性を感じさせない色です。暖色でもなく寒色でもない中性色と言われる色。かわいいともかわいくないとも言われることが少ない色です。
黄色と同じ心理四原色のひとつでも、見落とされがちな色になります。
おそらく緑はアナ雪以降のターコイズブルー(エメラルドグリーン)にとって代わられているのではないかと思います。
緑と同じ登場回数でも、特別感があるのが「虹色」
虹色は幼児が好みやすい色で、頻繁に出すとスペシャルな雰囲気もなくなりますし、出すぎるとくどく感じます。特別は少ないからこその特別。
キャラ設定も宇宙人と妖精でした。人間の領域ではないところに使われているのがさすがです。
人気カラーに共通する時代の空気感
プリキュアで定番カラーのピンク、黄色、ターコイズブルー、紫の色彩心理から共通して感じられる時代の空気感があります。
赤や青のようにはっきりした色とは違い、ふわっとしていて自己主張をはっきりしない空気感。
紫もはっきりした色ですがラベンダーが使われることでやわらかさを感じますし、ミステリアスな感じがはっきりした印象とは異なります。
時代のイメージとしては
・派手に1人目立つのではなく、みんなと協調・協力しながら課題解決する
・物質より感性
コロナ禍以降、人々は体験や経験に投資するようになったと言いますが、ますますその感覚が強そうです。
けれど協調を装いつつ、表には出さないけれど個々人の個性はしっかり持っています。
私はこれが好き、あなたはそれが好き
それぞれの価値観を押し付けない風潮もありますよね。
学校や会社以外に年齢・世代関係なく、同じ「好き」で繋がるコミュニティを持ち、ソロ活と言われるようなソロ行動もいとわない。
学校や仕事では最低限の関わりをして、好きなことに打ち込む。ふわっとゆるっと好きなことを軸にコミュニティを作る。
昭和生まれの私(たち)にとっては、何だか掴みきれないような感性かもしれません。
この感性をマーケティングにどう活かすか考えどころです。